現代社会の闇に切り込むミステリー小説「野良犬の値段」百田尚樹

本レビュー

前代未聞の劇場型誘拐事件、怒涛の展開が押し寄せて今夜あなたは眠れない

今回は、最近読んだ本の紹介をしてみたいと思います。

読書は大好きなので、これからも本のレビュー・・・といったら偉そうに聞こえますが、感想などお伝えしていけたらと思っております。

よろしければお付き合いください。

記念すべき第1弾は、百田尚樹さんの著書、「野良犬の値段」です。

百田さんと言えば、みなさんご存じ、言わずと知れた大ベストセラー作家であり、テレビ番組「探偵ナイトスクープ」の構成作家でもあられます。

そんな百田さんのはじめてのミステリー小説ということで読まないわけにはいきません。

その日は休日でしたので、自宅近くの書店で購入し、帰宅後すぐに読み始めました。

すると、もう止まらない、止まらない。

先の展開が気になって、本を閉じることができません。

しかしながら、休日といえども晩御飯の準備など主婦としての仕事をこなさなければなりません。

泣く泣く一度中断し、仕事から帰る夫を迎える準備をします。

続きはまた明日かな~って一度は思ってベッドに入るも、ど~しても続きが気になる!

我慢できず、読書再開。

結局、購入したその日のうちに一気読み達成です。

はっきり言ってそれぐらい面白い作品でした。

ここからは、ネタバレしない程度に内容に少し触れていきます。

本の帯にはこう書かれています。

私たちはある人物を誘拐しました。この人物を使って実験をします。

前代未聞の「劇場型」誘拐事件が、日本社会に”命の価値”を問いかける

もうこれだけで、どんな話なのか心つかまれます。

プロローグは、24時間営業の定食屋の店員をしている佐野光一のエピソードから始まります。

「今の自分は社会の片隅で冴えない日々を暮らしているが、いつか起業して大金を手に入れるんだ」という、ちょっと浅い考えの若者というのか、そんな人物です。

その佐野光一が、あることをきっかけにツイッターで注目を浴びていきます。

佐野光一を通して描かれる、現実の冴えない自分とツイッター上で注目される別人格ともいえる自分、その乖離具合がまさに今の現代社会によくみられる現象なのではないかとしょっぱなから考えさせられます。

物語全体を通して、ある意味日本社会の闇に鋭く切り込んでいっていて、もはやただのミステリー作品ではない様相を呈しています。

以下帯からの引用です。

突如としてネット上に現れた、謎の「誘拐サイト」。<私たちが誘拐したのは以下の人物です>という文言とともにサイトで公開されたのは、6人のみずぼらしい男たちの名前と顔写真だった。果たしてこれは事件なのかイタズラなのか。そして写真の男たちは何者なのか。半信半疑の警察、メディア、ネット住民たちを尻目に、「誘拐サイト」は”驚くべき相手”に身代金を要求するー。

誘拐された6人が何者なのかはもちろんここでは明らかにしませんが、物語のなかでは一人ひとりの人物像、背景がきちんと描かれていて、結構心をえぐられました。

だれでもちょっとしたきっかけで社会の一員から転落してしまったり、ある日突然幸せな人生が奪われてしまったり、自分だけは大丈夫なんてことはないのだなって改めて認識させられるぐらいのリアルな描写にしびれます。

小説を読んでいて、頭の中で登場人物が実在しているかのように動き出す感覚ってありますよね。まさにそれが体感できる小説です。

また著者のツイッターで、この作品がどんにベストセラーになろうともメディアでは絶対に取り上げないであろうといったことをつぶやいておられましたが、読んだらなるほど納得です。

物語は第1部、第2部で構成されています。

第2部を読み始めた瞬間、そう来たかって・・・。やめ時を完全に失って、物語に溺れること間違いなし。

そして、エンディングに向かって押し寄せる怒涛のストーリー展開に、ページをめくる手が止まりません。

読後は、一本の映画をみた感じの余韻が残って、しばらくは興奮状態で眠れませんでした。

とても面白くて読みやすい、それでいて深く考えさせられる作品なので、ご紹介しました。

興味を持たれた方はぜひ読んでみてください。

それでは、また。

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